時計愛好家ならもちろんご存知の機能、クォーター・リピーター。
しかし、超複雑機構ということはわかっていても、それほど馴染みのない方も多いと思います。
分かりやすく説明していきましょう。
まず、モデル名に「リピーター」がつくと、時刻を音で知らせる機能がついている、ということになります。
なぜ repeater=繰り返し なのかと言えば、その時刻になったことを針で表示しているのに、音で繰り返し教えてくれる、という意味合いになります。
まだ夜光塗料が開発されていない時代、暗闇の中、今何時だろうと、ボタンを押すと、音で時刻を教えてくれる便利な機能だったわけです。
まずは、クォーター・リピーターの音をきいてみよう
時計の針は10時45分。
最初の「キン」は「時」を表し、10回鳴ります。
その後、音色は「15分」を表す「キンコン」に変わり、3回鳴りますので、45分ということなります。
そして、時計の針が48分であっても、52分であっても、59分であっても同じ。
15分単位の大体の時間がわかる、これが 「クォーター=1/4」の所以です。
リピーターの種類
代表的なものは3種類。
5時23分に、左上のボタンを押すと、それぞれどんな音で知らせてくれるのでしょう。
1. クォーター・リピーターの5時23分
音色:1時間「キン」・15分「キンコン」の2種類
「キン」「キン」「キン」「キン」「キン」
「キンコン」
5時16分~29分まで同じです。
2. ファイブミニッツ・リピーターの5時23分
音色:1時間「キン」・5分「キンコン」の2種類
「キン」「キン」「キン」「キン」「キン」
「キンコン」「キンコン」「キンコン」「キンコン」
5時26分~29分まで同じです。
3. ミニッツ・リピーターの5時23分
音色:1時間「キン」・15分「キンコン」・1分「コン」の3種類。
「キン」「キン」「キン」「キン」「キン」
「キンコン」
「コン」「コン」「コン」「コン」「コン」「コン」「コン」「コン」
「コン」は最大で14回鳴りますので、正確な時刻を知りたいときには耳を澄まし、数えなければいけません。
リピーターの生産について
特に、1分単位の時刻を鳴らすミニッツ・リピーターは、名門ブランドでは1000万円を超えるのが当たり前の、トゥールビヨンを超える超複雑機構です。
しかし、「このメカニズムの面白みを多くの愛好家に知ってもらいたい」と、クォーター・リピーターを手の届く価格で生産していることで有名なのが、クロノスイスです。
かつて、ブライトリングにムーブメントを供給していた、1896年創業の「ケレック」というブランドがあり、ファイブミニッツ・リピーターや、クォーター・リピーターを数多く手掛けていました。
世界の時計市場でもケレックのお取り扱いがあり、20年前頃の価格で、シンプルなクォーターリピーターのステンレスモデルが、定価で100万円程度でした。

愛好家のお客様にとても人気がありましたが、その後、ブライトリングに吸収され、ケレックは幻のリピーターとなりました。
今では、当時と比較し、材料費や人件費が高騰しており、さすがのクロノスイスもこの価格帯での生産はしていませんが、それでもミニッツ・リピーターとは一桁違う数字並び。
スマホや電子機器で時間がわかる時代、むろん実用的ではありませんが、手の届く価格帯で、手作りのリピーターの面白みが味わえるとあって、稀少なコレクターズアイテムとなっているのです。